映画「峠」によせる思い。

このブログでは、歴史の話をするというのも一つのテーマになっていて、

広告と歴史が、なんか関係あるのかということなんですけど。

 

残念ながら、そんなに関係ありません。笑

ただ、実はちょっと深いところで、

私は関係あるぞと思ってる部分があるんですけど、

それは、「言霊」ってことなんです。

これは、説明がなかなか難しいです。

 

一言では説明できませんし、

したとしたらかなり陳腐な説明になってしまい、

正しく伝わらないと思ってます。

 

なので少しづつ、砕いて説明していきます。

おそらく数年かかります。

 

今日も特に、広告には直結していないんですが、

へーちょっと興味あるぞという場合は読んでみて下さい。

ただし、ちょっと長いです。

 

私は、広告でストーリーを語るものの責任として、

「嘘はいけない」

「事実を書く」

ことにこだわっています。

 

今回は、嘘が多すぎる昨今の、

歴史に取材した映像作品について、考えてみたいです。

 

私は、小学校の担任の先生にストーリーとして、

日本の歴史の面白さを教えてもらって、

それからずっと、 NHK の大河ドラマとか、映画とか、

読み物としては、司馬遼太郎の作品を好んで読んで、

育ってきたという経緯があります。

 

司馬遼太郎の作品のなかでは、「峠」に特別な思いがあります。

司馬作品の中では一番好きな作品なんです。

 

それはなぜかと言うと、

 

世のなかの、明治維新に対する幻想みたいなものに違和感があります。

この「明治維新幻想」を作り出したのは、

司馬遼太郎にも責任はあると思いますが、

 

例えば、坂本龍馬をアイドルに祭り上げた

司馬遼太郎の「竜馬がゆく」っていう作品、

初版は昭和30年代後半だと思うんですけど、

昭和45年ぐらいに、この「竜馬がゆく」は、

NHK の大河ドラマになっているんです。

確か、明治100年に当たる年です。

 

私はこの作品は見ていません。

ビデオもほとんど、残っていないと思います。

 

その頃から坂本龍馬っていう名前は、

日本中に知られるようになったけれども、

テレビや小説の影響というのはすごいんです。

 

明治維新幻想というものが、どういうものかと言うと、

明治維新は、徳川幕府の圧政に虐げられていた、

若い人たち、10代とか20代の、例えば坂本龍馬のような、

地方の下層階級の人たちが、

やむにやまれず立ち上がった、「革命運動」だった。

みたいなね、

 

だから、この若い人たちは、すごいんだと、

明治維新に活躍した、幕末の志士です。

 

西郷とか、大久保とか、桂小五郎とか、坂本龍馬とか、高杉晋作とか、

なんか、今のジャニーズ事務所みたいな、扱いになってます。

アイドル養成所みたいに。

 

そのアイドルたちが、日本を変えたんだ。

みたいなイメージがあるんですけど、

歴史を深く知るにつれ、そこに違和感を覚えるようになってきました。

 

岩倉具視はヒドイでしょ。とか、

徳川慶喜がもっとしっかりしていたら幕府は終わってなかったとか、

大政奉還を最初に言い出したのは坂本じゃなくて、横井小楠でしょとか、

なんでもかんでも龍馬の手柄にするなとか、

いろいろわかってきて、

 

そんな時、出会ったのが司馬作品の「峠」なんです。

 

明治維新というのは、薩長VS徳川 という図式になるのですが、

薩摩、長州の連合軍が、朝廷を動かして、

徳川幕府とその周辺と権力争いをして、勝ったというのが、

明治維新でいいと思ってます。

 

しかも、相当汚い手を使って徳川を追い込んでいった。

決して、若い人たちが

「やむにやまれず立ち上がって正義の革命を起こした」

というような、きれいごとではなくて、

 

そして、坂本龍馬などは利用価値がなくなった時点で

暗殺という形で、始末されちゃった、

歯車みたいなもので、そんな英雄なんかじゃない。

アイドルみたいに扱うな、と、今の私は思っているんです。

 

徳川の悲劇は、たまたま当時の代表者(将軍)が、

水戸藩と言う、思想的には武士政権より、朝廷に対して傾いている

(元はと言えば家康の画策ではあったが)

狂信的天皇崇拝信者の、

これは水戸黄門(光圀)以来の藩の伝統ということもあります。

そういう家柄の出身である、慶喜だったというところが、

徳川家の不幸でもあったわけです。

 

この話は深いので、またいつかするかもしれません。

今日はこのヘンでやめます。

 

明治維新は、行政機関としては行き詰まりつつあった徳川幕藩体制というものが、

近代国家になるために、武士階級とその周辺だけでの、権力闘争の結果です。

 

朝廷を巻き込んだ、薩摩長州が、徳川勢力を追い出して、

近代国家を作り上げたと言う、決して、

庶民が革命を起こしたというような、フランス革命のようなことではないんです。

 

その意味では、世の中を自力で変えていったと織田信長とは

同じ立身出世物語のように見えて、スケールが全然違います。

 

坂本龍馬は、明治維新の中の一つの駒でしかなくて、

坂本龍馬が世の中を変えたたわけではないってことです。

龍馬がいなくても、明治維新は達成されてます。

でも、信長は彼が居なかったら、今の日本はこの形ではなかったろうなと

思えるくらい、偉大です。

 

何が言いたいかと言うと、そんなに坂本龍馬は評価しないですよって

言いたかっただけなんです。

高知の人には申し訳ないんですけど、ちょっと龍馬龍馬と騒ぎすぎだなと、

最近の傾向を見て思ってます。

 

それよりも、越後長岡を見よと、

ここにももっと、面白いやつがおったぞっていうのは、

これも同じ、司馬遼太郎作品なんですが、

それが「峠」の中で取り上げた越後長岡の河井継之助で、

私は「峠」を、高校生ぐらいの時、夢中で読みました。

 

私の中では、河井継之助こそ、

この時代の 最も大好き人物なわけなんです。

龍馬や、高杉よりね。

 

もちろんその河井ですら、コマの一つに過ぎませんが、

 

でも河井は、坂本龍馬や、高杉晋作や、吉田松陰などと違って

そんなに人気がないと言うか、

あまり知られていないので、

ドラマ化されたことが、今までに無かったんです。

 

 NHK大河でも、河井継之助が出てきたのは、

これは私も見ていたんですけど、昭和52年の、

中村梅之助が大村益次郎をやった「花神」と言うドラマです。

高橋英樹が河井継之助で登場しました。

 

その後阿部寛が、民放の番組で、(平成11年だそうです。これも見ました)

島田紳助が司会していたバラエティ番組でしたが、

ドラマ部分も、しっかり作られてました。

 

民法ではその後、中村勘三郎主演の「河井継之助~駆け抜けた蒼龍」という

ドラマが作られましたが、これは正直ひどかったです。

民法は予算無いですからね。かなり雑なイメージでした。

 

映画などでは、取り上げられた記憶がなくて、

大河ドラマ花神の河井継之助は、私の中で最高峰でした。

高橋英樹も大好きなので、 ただもう40年近く前の作品なんですね。

 

高橋さんも、もう70歳を超えちゃったので、

もう1回河井継之助とは行かない年齢です。

 

阿部寛も50歳も過ぎちゃったのですが、

もし映画でやるなら、もう1回阿部寛で、と思ってました。

 

そんなことを考えているぐらい、この「峠」という作品は、

私にとっては、映画化されるって言うのはかなり、

期待している作品なんです。

 

歴史ドラマに関しては、最近の大河にも、

民放などで作っている時代劇にも、実はかなり失望しています。

 

映画で取り上げられた最近で言えば、

岡田准一主演の「関ヶ原」とか、

三谷幸喜の「清須会議」とかは、

まあまあ面白かったです。

 

民放の時代劇がダメな理由は、お金のかけ方が違うってことですね。

 

なので、なかなかリアルな映像が撮れないという気がしています。

 

リアルっていうのは、江戸時代の町並みとか、再現するんですけど、

そこにはなかなか限界はあるとして、

例えば史実に忠実になるべく、多少の脚色は仕方ないと思うんですけど、

 

小説とか、漫画とかを原作にして映像化していくので、

そんなリアルと言っても限界はあると思うんですけど、

いくらなんでもこれはって言う、のがあります。

 

一番ダメなのは、例えば今年の大河ドラマの「麒麟がくる」で、

このドラマは、どちらかと言うと元来敵役の

明智光秀が主人公になってますよね。

 

明智光秀が主人公というのは、すごく面白いというか

良い発想だとは思うんですが、

彼は、なぞの人物で、とくに前半生は闇に包まれていると言うか、

分からないことが多いんです。

資料が残っていないってことですね

 

美濃の斉藤家に、明智っていう一族があって、

そこの出身じゃないか、ぐらいのことが分かっているのと、

 

足利家に仕えていた細川藤孝と組んで、

15代将軍足利義昭を助けた人、みたいなところがあって、

そこから織田信長に見いだされて出世していくんですけど、

それ以上のことはよくわからないです。

 

本能寺の変自体が謎で、

歴史を研究する上ではこの謎を解くという事が

一つの大きなテーマだったりするわけなんです。

 

明智光秀を研究するというのは、

私も、すごい興味のあるテーマではあるわけなんです。

 

そういう意味で、「麒麟がくる」は、期待していたんですが

ドラマが始まって見てみると、とってつけたような

架空の恋愛物語みたいなものが描かれていて、なんかガッカリといますか

全然リアルじゃないんですよ。

 

もしかしたら、小学生とか初めて歴史を見る人にとっては、

明智光秀ってそういう人だったのかなと思われると、

ずいぶん違うんだろうなと思ってて、

そういう意味ではこういうドラマを作る人の罪というのは、

深いぞと思っているわけです。

 

2年ぐらい前の「西郷どん」も、かなりひどいです。

 

鹿児島の方には申し訳ないんですけど、

西郷隆盛も、実は何やったかよくわからない人ですよね。

 

私の中では、政治家としての評価は低いです。

もしかしたら馬鹿なのって思ってたりしてて、

でも、清潔で、男気があって、人たちに慕われる人柄であったということは

さすがにわかります。

 

苦労して、近代国家を作ったのに、

長州の山県とか、井上とか、薩摩の黒田もですね。

汚職事件ばっかりなんですよ。そら、絶望しますよね。

 

西郷は、一番肝心な時中央政界にいないんです。

幕末には、島津久光にたてついて、

沖永良部とか奄美大島に流されていて、

最後の最後に鳥羽伏見の戦いぐらいから活躍して

明治の元勲になったって言う感じです。

薩摩の人すいません。ざっくりです。

 

それを1年にわたってドラマ化するわけなので、

なんでもかんでも西郷の手柄にしてしまうって、

そういう作り方をしています。

 

ある程度仕方ないんですけど、「西郷どん」は、ひどかったです。

 

まあ、人気の俳優さんを使うので、

あんまり汚れた設定にはできないのかもしれないですけど、

もう少し、史実に忠実にドラマ化してほしいというのは、

視聴者として、不満の残るところだったわけです。

 

どういうことか、1つだけ指摘しておくと、

徳川慶喜と、西郷が友達みたいな書かれ方だったり、

(史実は多分、二人は面識ないと思います。あるのかな?)

 

そのつなぎ役として薩摩出身の、農村の娘が、

江戸で遊女になっていて、

それを慶喜が身受けして側室にしたり、

 

その側室が慶喜に説教したりと、まあめちゃくちゃ、

でした。

 

農村出身の側室が、将軍に説教できますか?

 

脱線しすぎました。

「峠」に戻ります。

 

なんか愚痴みたいになりますけど、つまり、司馬遼太郎の「峠」は、

私の中では特別な作品なので、映像化の時には、

リアルに河井継之助を再現して欲しいという、これはもう切望と言いますか、

かなり期待していたんです。

 

期待しながら、映像化される機会を待っていました。

河井継之助という凄い人がいたんだというのを、

日本中の人に知ってもらいたかったんです。

 

河井継之助がどれぐらいすごいかというのは、

司馬遼太郎の「峠」を読んでいただければいいと思います。

 

昨年に、この「峠」が、映画化されるという情報をキャッチして、

すごく期待していたんですね。

映画「峠」は、いよいよ9月25日に公開されるみたいなんですけど、
(これは、コロナの影響で伸びる可能性が大です。)

 

映画館に、チラシなどが設置されてそれを手に取って、
予告編などもネットで見れるようになりました。

見てちょっと、愕然としたと言うか、

ありゃりゃ、こうなのかって言うのを、指摘しておきます。

 

実際の河井と役所広司の河井

 

 

公開前にこんな事言うのはなんですが、

 

映画本編を見たわけじゃないので、

この映画がいいか悪いかは現時点でもちろん判断できません。

が、主演の役所広司の河井継之助に紛している姿を見て、

あれ、リアルじゃねーな、と

もうちょっと、再現できなかったのかなと、思いました。

 

映画峠のキャストを見ましてね、第一印象は、これちょっと

みんな年齢が高すぎなんじゃないのってことですね。

 

河井継之助は、例えば坂本龍馬とか高杉晋作に比べると少し歳が上なんです。

当時の平均寿命が年齢が50歳ぐらいとして、

その感覚だと、60歳はおそらくすごいおじいちゃんだと思うんですね。

 

今の六十歳は、すごく若いので実際の年齢より十歳ぐらい上の役者さんが、演じても

リアルな感じで、いいと思うんですけど、

 

キャストさんの年齢があまりにも気になって、

実際の人たちが、当時どれぐらいの年齢だったのかということを、

今回配役された役者さんと比較して書き出してみました。


河井継之助41 役所広司64

河井妻すが34 松たか子42

川島億次郎43 榎木孝明64

山本帯刀24  AKIRA38

徳川慶喜31  東出昌大32

小山良運41  佐々木蔵之介52

岩村精一郎23 吉岡秀隆49

牧野忠恭44  仲代達矢87

 

どうですかね、ちょっと年齢がいきすぎですよね。

 

戊辰戦争の長岡の戦いというのは、別名「北越戦争」と言います。

なぜ、この北越戦争というのが勃発したかと言うと、

当事者の年齢に実は関係があります。

 

官軍、賊軍と言う言い方でなく、

西軍、東軍という言い方を私たちはするんですけど、

 

西軍に人がいなくてですね、人がいないというのは人材がいないってことです。

とりあえず、誰でもいいから、戦争経験のあるやつをとりあえず配置しろということで、

 

長岡の河井継之助といえば、東軍の人たちの間でも、そこそこ知っている名前だったと思うんですけど、

 

この方面を担当して、河井継之助と談判して、北越戦争のきっかけを作ったのが、

土佐藩出身の、軍監岩村精一郎っていう男なんですけど、

岩村は明治以降も、佐賀の乱の江藤新平とも、同じような役割を果たしてて、

佐賀の乱を引き起こしたきっかけにもなっている問題児です。

その岩村が長岡に来た時、彼は23歳なんですよ。

 

血気盛んな年齢で、しかも多くの兵士を束ねてて、

そもそも荷が重い上に、田舎の馬鹿家老(河井)程度のものに、

なめられてはいけないという姿勢で、かなり高ぶった、

無礼な対応をしてしまいます。

 

今の日本で考えても、23歳じゃ軍隊として入隊してまだ2-3年てす。

経験がほとんどなくて、そういう人しか居なかったというのが、

西軍の陣容なんです。

 

23才が、この方面の司令官になって指揮してるっていう、

人がいないっていう証拠です。

その世間知らずの男の無礼な態度に、河井継之助が憤って、

戦争が始まってしまうわけです。

 

河井は本当は戦争なんかしたくなかったんですよ。

 

戦争したくないってお願いしに、西軍の陣地に来て、説得しようとしてたんです。

それを、聞く耳もたんて感じで、銃剣で追い払ったのが岩村です。

 

官軍はこんなに非常識なのかと、思いやりがないのかということに、

怒って戦争が起こるわけなので、

 

この役は、若くて浅はかなやつでないとダメなんです。

それに対してこのキャストの、吉岡秀隆さん49歳ですよ。

どう演じるのか、大丈夫なんですかね?

23と49じゃ、親子ほどの年の差です。いやいやいや

 

後、ご隠居様。

藩主が隠居して、ご隠居さまになってるんですけど、

牧野忠恭です。隠居して雪童公です。

雪童公はこの当時、44才。

仲代さんは私も大好きな、日本を代表する名優で、

この方が出るってだけで作品も映えるんですが、

44才の役を87才がやるってのは、

 

リアルじゃないですよね。

ほかにもいろいろあるんですが、

今日は、このへんでやめておきます。

 

65才の役所広司が、どんな41才を演じるのか、

楽しみにしています。

 

出来たら月代は剃ってほしかったです。

役所広司も好きです。

映画「山本五十六」も、とてもよかったし

 

映画「峠」は、もう本当に期待してますので、

ぜひ感動させてもらって、河井継之助を知って欲しいと、思っています。

日本中の人に、こんなすごい人がいたんだとどういうことを、

知らしめて欲しいと心から願っています。

 

 

追伸

徳川慶喜役の東出昌大さん、頑張ってね。

世間のどうでもいい批判に負けずに、本当に頑張って欲しいです。

男は仕事です。女もかな。

映画「峠~最後のサムライ」公式ページは下記から
http://touge-movie.com/

 

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